消化器がん(胃がん・食道がん・
大腸がん)について
口から食道、胃、小腸、大腸、肛門までの消化器は、食べ物の消化や吸収、排泄において重要な役割を担っています。
ここにできる代表的ながんには、胃がん、食道がん、大腸がんなどがあります。国内における胃・食道・大腸がんの死亡者数は、がん全体の死亡者数の30%以上を占めています。
以前は「がん=死」というイメージがありましたが、現在では早期発見・早期治療によって良好な予後が期待できるようになっています。
そしてこれらのがんの早期発見において重要なのが、定期的な胃カメラ検査・大腸カメラ検査です。
胃がん
胃の粘膜の細胞ががん化し、徐々に増えていくことで発生します。次第に粘膜の下層へと広がっていき、胃の漿膜(胃の外側の膜)、さらに大腸・膵臓といった近くの臓器へと達します。また、リンパ液・血液によってがん細胞が運ばれ、身体の離れた臓器へと転移することもあります。
症状
早期にはほとんど症状がありません。また進行しても必ず症状が現れるというものでもありません。
代表的な症状に、以下のようなものがあります。
- 胃の痛み、不快感
- 胸やけ
- 吐き気
- 食欲不振
- 体重減少
- 貧血
- タール便(黒い便)
原因
胃がんの発症メカニズムは、現在のところはっきりしたことが分かっていません。
ただ、発生のリスクを高めるものとして、ピロリ菌感染があります。これにより慢性的な胃炎が続くことで、胃がんの発生リスクが高くなると言われています。
それ以外の要因として、塩分の摂り過ぎ、野菜・果物の摂取不足、飲み過ぎ、喫煙、ストレスなどが挙げられます。
胃潰瘍と胃がんの違いは?
関係はあるの?
胃潰瘍とは、胃粘膜にただれやびらんが生じ、深く傷ついた状態を指します。胃がんと似通ったリスク要因を持ち、また症状もよく似ていますが、治療法はまったく異なります。
つまり、胃潰瘍だと診断されてその治療を受けているあいだに、胃がんが進行してしまうということが起こり得るのです。
胃潰瘍が胃がんへと進行することはありませんが、上記のような関係にあるからこそ、胃カメラ検査で正確に診断を受けることが大切になります。
食道がん
食道粘膜に発生する悪性腫瘍が食道がんです。大きく、扁平上皮がんと腺がんに分けられます。このうち、食道本来の粘膜に発生する扁平上皮がんが、食道がん全体の90%を占めています。一方で腺がんは、背景に逆流性食道炎からのバレット食道があることが多くなります。特にバレット食道から生じた腺がんを、バレット腺がんと言います。
食道がんは、進行とともに粘膜の奥深くへと広がっていき、周囲の臓器へと浸潤したり、がん細胞が血液やリンパ液に運ばれて転移することもあります。
症状
初期には症状がありません。進行すると、以下のような症状が現れることがあります。
- 食べ物がのどに詰まる、落ちていかない感じ
- 胸の痛み
- 咳
- 声枯れ
- 体重減少
原因
代表的な原因として、喫煙と飲酒が挙げられます。特に、食道がん全体の90%以上を占める扁平上皮がんでは、その関連性が強いと言われています。
その他、食道粘膜を刺激する熱い食べ物・飲み物を口にすることも、食道がんのリスクを高める要因になるという指摘があります。
逆流性食道炎は食道がんになりやすい?
逆流性食道炎を放置していると、胃酸の刺激によって食道の粘膜が胃の粘膜に似た組織へと置き換わってしまうことがあります。これを、バレット食道と呼びます。ほとんどのバレット食道は、逆流性食道炎に起因すると言われています。
そしてバレット食道から、特殊な食道がん「バレット腺がん」が発生することがあります。近年、国内では逆流性食道炎の患者数が増加しています。逆流性食道炎は比較的身近な病気ですが、だからといって放置せず、きちんと治療を受けるようにしてください。
大腸がん
大腸の粘膜に発生するがんです。良性のポリープががん化して発生するタイプと、正常な粘膜細胞が直接がん細胞へと変化して発生するタイプに分けられますが、ほとんどは前者に該当します。
なお、日本人の大腸がんのうち約70%は、S状結腸または直腸に発生します。
症状
早期の大腸がんでは、自覚症状がほとんど見られません。進行すると、以下のような症状が出現することがあります。
- 血便、便潜血検査陽性
- 腹痛
- 便秘と下痢の繰り返し
- 便が細い
- 体重減少
- 貧血
- 全身倦怠感
原因
野菜・果物の摂取不足、運動不足、肥満、喫煙、飲み過ぎなどがリスク要因となります。近年、日本人の大腸がんの死亡率は上昇しており、これには食生活の欧米化が影響していると言われています。
また、大腸がんの家族歴がある場合も、大腸がんの発生リスクが高くなります。
潰瘍性大腸炎は大腸がんになる
リスクが高い?
発症から10年以上経過している直腸炎型を除く潰瘍性大腸炎の方は、そうでない方と比べて大腸がんの発生リスクが高くなることが分かっています。長期にわたる大腸の炎症が、粘膜細胞を変性させがんが発生するものと考えられます。
大腸がんおよび潰瘍性大腸炎の正確な診断には、大腸カメラ検査が欠かせません。気になる症状がある方は、お早目に当院にご相談ください。
なお潰瘍性大腸炎の症状としては、腹痛、下痢、血便、体重減少といった、大腸がんの症状と似通ったものが挙げられます。
消化器がん(胃がん・食道がん・
大腸がん)は併発する?
あるがんとは別に、異なる臓器で発生したがんやその状態を「重複がん」と言います。
たとえば食道がんの場合、重複がんが発生する割合は約20%にものぼります。これは、飲酒や喫煙、食べ過ぎ、肥満などさまざまながんで共通するリスク要因が存在するためだと考えられます。またその他、同じ遺伝子の異常が原因となり、重複がんが発生することもあります。
食事や運動、睡眠といった生活習慣を改善することで、がんおよび重複がんのリスクを下げながら、定期的な検査でがんの早期発見に努めましょう。
早期発見・早期治療をするために
内視鏡検査を受けませんか?
胃カメラ(胃内視鏡)検査
食道、胃、十二指腸の粘膜をカメラで観察し、炎症や潰瘍、ポリープ、がんなどの病変を早期に発見することができます。
当院では、鼻から極細のカメラを挿入することで苦痛を軽減できる「経鼻内視鏡」を採用しています。嘔吐反射も起こりにくく、従来の経口内視鏡と比べると患者さまのご負担は大幅に軽くなります。
また、鎮静剤を使用した場合には、ウトウトした状態でほとんど苦痛なく検査を終えられます。
日本消化器内視鏡学会専門医である院長が、丁寧に検査にあたります。
大腸カメラ(大腸内視鏡)検査
大腸全体の粘膜をカメラで観察し、炎症やポリープ、がん、あるいは痔核などの病変を早期に発見することができます。
当院では、日本消化器内視鏡学会専門医である院長が、高性能の内視鏡を用いて丁寧に検査を行います。胃カメラ検査と同様に、鎮静剤の併用が可能です。
また当院では、院内に前処置室と専用のトイレをご用意しております。読書やテレビ鑑賞をしながら、安心して下剤の服用・前処置をしていただけます。
※ご自宅で下剤を飲み、前処置を済ませてからご来院いただいても構いません。